思想のようなもの、道徳のようなもの、愛情のようなもの、生命のようなもの、
単語だけあって、わたしたちには理解のできないもの。
本当はそんなものどこにもなくて、わたしたちは、空っぽのコップから「美味しい」と水を飲んでいる。
たとえば、きみが死ぬということ。
それは体がなくなるということでも、
もう会えないということでもなくて、
単純に、ごく単純に、わたしたちが同じひとつに戻るということ。
こと。と呼ぶそれを、わたしもきみも、見たことはないけれど。
粉々になったら薬にして飲みましょう。たぶん、よく効くはずだから。
眠る前の静寂を、さようならの声でかき消して。